東京地方裁判所 昭和54年(ワ)8602号 判決
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【判旨】
一本件不動産につき昭和四六年九月二五日付で原告から被告岩崎に対する所有権移転登記を経由し、その後、被告第一勧銀、同公庫及び被告信用金庫を債権者とする原告主張の各抵当権設定登記の存することは当事者間に争いがない。
二<証拠>を総合すると、原告は株式会社科学振興センターの経営資金を援助するため、被告岩崎に対し一〇〇〇万円の借用を申し入れたが、同人に手持資金がないため取引のある被告第一勧銀成増支店から融資を受けたうえ原告に貸し付けることとし、右銀行支店に相談したところ、同支店係員は本件不動産を担保に住宅ローンの方法によることが可能であるが、本件不動産を譲渡担保にして被告岩崎名義とするのでなければ融資の申込みには応じられないというので、原告と被告岩崎はこれを了承し、昭和四六年九月二三日右両名間に、被告岩崎を貸主、原告を借主、金額一〇〇〇万円、利息年九分八厘四毛、昭和四六年一一月以降毎月二〇日限り一〇万六四八三円宛(ただし最終回一〇万六四五二円)の分割弁済、遅延損害金日歩四銭とする消費貸借契約を締結し、その債権担保のため本件不動産を譲渡担保として被告岩崎名義とすることとし、その旨の公正証書を作成のうえ、同月二五日付で登記簿上売買を原因とする所有権移転登記を経由したこと、被告岩崎は、昭和四六年一〇月一一日被告第一勧銀との間に同人を借主、同人の父岩崎八郎を連帯保証人として住宅ローンにより金一〇〇〇万円を、使途土地建物購入資金、月利0.82パーセント、遅延損害金年一四パーセント、弁済期限昭和六一年一〇月一二日、毎月一〇万六四八三円分割弁済の約定で借り入れ、本件不動産に抵当権を設立し、同月一五日付でその旨の登記をしたこと、原告が前記債務を完済するまでには十数年を要することになるが、原告は、被告岩崎に対し本件不動産を担保に前記住宅ローン一〇〇〇万円を借り受けることを承認したのは別として、それ以外に本件不動産を他に譲渡し、あるいは、担保提供するなどの処分権限を付与した事実はないこと、しかるに、被告岩崎は更に本件不動産につき被告第一勧銀、同公庫並びに被告信用金庫を債権者とする原告主張の各抵当権を設定、登記したほか、松本薫との間で一時的にせよ譲渡担保に供し同人名義の登記をしたこと、以上の事実を認めることができ<る。>
三前記事実関係に照らすと、被告岩崎は、原告との間で、本件不動産につき譲渡担保を設定し、これを被告岩崎の所有名義に登記し、かつ、同被告が本件不動産を担保に被告第一勧銀から住宅ローンにより一〇〇〇万円の融資を受けたうえ、同金額を原告に貸し付ける旨の合意をしたのに、被告岩崎が右譲渡担保の約旨に反して前記住宅ローンの抵当権以外に被告第一勧銀、同公庫及び同信用金庫との間に原告主張の各抵当権設定、同登記をしたほか、松本薫との間に譲渡担保設定をしたものであることが認められるところ、原告がこれを理由に被告岩崎の債務不履行として同人に対し原告主張の内容証明郵便により前記譲渡担保契約を解除する旨の意思表示をしたことは、当事者間に争いがない。
そうすると、原告と被告岩崎との本件譲渡担保契約は右により有効に解除されたことになり、同被告は本件不動産に関する前記所有権移転登記の抹消登記手続をすべき義務がある。
四被告第一勧銀が原告主張の本件各抵当権設定時において、本件不動産に関する被告岩崎の所有権取得登記が登記簿上売買を原因とする旨の記載にかかわらず、原告との間の譲渡担保であることを熟知していたものと認むべきことは前記認定のとおりであつて、被告公庫については被告第一勧銀がその代理人として行為したものであることについては当事者間に争いがない。
従つて、被告第一勧銀及び同公庫は、民法九四条二項の類推適用により原告と被告岩崎との本件譲渡担保契約の存在につき悪意の第三者に該当するものというべく、原告はその承認にかかる被告第一勧銀の前記住宅ローンによる抵当権設定登記を除くその余の抵当権設定登記並びに被告公庫の本件抵当権設定登記につきその無効を主張し、その抹消登記手続を求めることができるものというべきである。そして、被告第一勧銀の右住宅ローンの残債務が六五〇万七三八円とこれにつき昭和五四年七月一三日以降支払済みに至るまで年一四パーセントの割合による遅延損害金支払義務の存することにつき当事者間に争いがないので、原告は同被告に対し右金額の支払と引換えに前記住宅ローンによる抵当権設定登記の抹消を求めることができる。 (牧山市治)